« 2006年2月 | トップページ | 2006年4月 »

2006/03/20

聴覚障害と住環境を考える

tokusima23月19日、徳島のNPO法人阿波グローカルネット主催のタウンミーティング「聴覚障害と住環境を考える」に参加してきました。講演してくださった第一福祉大助教授の山口利勝先生は中途失聴者であり、現在も補聴器をつけての聴こえが6割程度と言われていました。20代前後から軽い難聴がはじまり、年々症状が進行していった過程では、自殺を考えるほど一人で苦しみ、”ごまかし、逃げる”人生だったと、体験を話してくださいました。

いただいたレジュメにも、聴覚障害者についての詳しいデータがびっしりと書かれています。
聴覚障害にも、
難聴者:医学的に難聴と診断され、補聴器などを活用して声による会話を行っている人
ろう者:声に頼らない手話コミュニケーションを重視する聴覚障害者で、典型的には聾学校卒業生を指す。
中途失聴者:人生の途中から聴覚障害を負った人

など、障害内容が分かれていて、さらに難聴にも軽度・中等度・高度・重度と程度に分類があり、障害認定を受けられる高度以上の難聴者よりもある程度の会話は聞き取れるが、8割聞き取れても2割は聞き取れないというような軽度の方が圧倒的に多い事も分かりました。

軽度の場合、1対1では聞き取れても複数での会話になると聞き取れなかったり聞き間違いがあったり、相手の気持ちがうまく理解できなかったりと、一見、他者から見れば障害が分かりにくいだけに、理解されず苦しんでいる方も多いというお話を聞きました。

山口先生のお話は終始、聴覚障害がいかに社会の理解がなく、苦しんでいる人も多い、大変な問題を抱えている障害であるか、といった話であったように感じました。

その時点では、もちろんそれは事実だとしても、それを自分からの努力や工夫で、障害があってもいい人間関係が築けている、自分らしく生きている人の例も話していただかないと、聞く人の心にマイナス要因ばかりが印象付けられてしまうのではないか、聴覚障害をお持ちの方が聞いたら、ますます悲観的に捉えてしまうのではないかと、心配になりました。

ただ、改めて大切な視点に気付かされた事がありました。
もしも身近に障害を理解されず社会参加出来ずに悩んでいる人がいたら、私はきっと、周囲に努力してもらうことも必要だけど、自分から自分の障害について発信していくことも必要だと、話しかけると思います。

それは実際に必要なことなのですが、その前にワンステップ重要な手順が抜け落ちていては、返って傷を深めてしまう可能性もあるということです。他者に障害の理解を求める以前に、自分でも”他者から見えない障害である
ことが理解できていない人も多い”ということ、”自分の聴こえ方が、どんな状態であるのか説明できない人も多い”ということをお聞きして、なるほどと考えさせられました。
まずは自分の障害がどういうものなのか、障害の構造を分析し理解することが障害の受容につながり、他者と関わるときに困難だと感じても、それは自分が悪いのではない、恥ずかしいことではない、人に配慮を求めればいいのだと考えられるように努力する、または関わる専門職などが導いていくことが大切なのだとお聞きしました。
そのために自分の状況を説明できる力や強さを見に付けていくことが必要であることは、他の障害でも言える事で、そうした心のバリアを取り除くために、健聴者や社会にも理解を求めていきたいと、強く訴えていた山口先生の思いも最後までお話を伺って理解できました。

山口先生が紹介されていた中に、「耳の障害は、人と人との関係をうばう障害である」というヘレン・ケラーの言葉がありました。

今回は「聴覚障害と住環境」というテーマでしたが、何がバリアで改善しなければいけない点かというところは、ハードではなく、コミュニケーションがうまく取れないことによって起こる問題や精神的ストレスが大きなウェイトを占めているという事の深刻さを改めて考えさせられましたし、これから住環境整備の現場に関わる中でも、そうした視点を生かしていきたいと感じました。

参考に、山口利勝先生の著書をご紹介します。
「中途失聴者と難聴者の世界 -見かけは健常者、気付かれない障害者-」

tokusima1tokusima3

主催の阿波グローカルネット考案の、難聴者のためのコミュニケーションボード(筆談ボード)「COBO」と、NTT発行の「電話お願い手帳」の画像を掲載します。

| コメント (3) | トラックバック (2)

たけさんと再会

takesan13月19日。徳島でのタウンミーティングにゲストとして招かれていた、たけさんこと河村武明さんと久々の再会。
「たけさぁ~ん!」と手を振ると、「おー!!」と驚いたような顔をしてました。
今回はイベントのワンコーナーとして、新作も含めて絵の展示と、即興で絵を描くパフォーマンスもあり、久々に見る「たけワールド」に圧倒されました!シンプルで力強い色使い、書き添えられた暖かいメッセージ。つなぎを着て、頭にはタオルを巻きつけ筆を持つ職人スタイルのたけさんも絵になります。やっぱりいいですねぇ(^^)♪

振り返れば、たけさんとの出会いは2003年11月。徳島での個展を見に行った時でした。絵に感激して話しかけると、黙ったまま困った表情のたけさん。「筆談でお願いします」そう言われて筆談ボードを渡されるまで、障害がある事はまったく分かりませんでした。そうして話をさせていただいているうちに、たけさんからこんな一言が。
「高知の人にも僕の絵をぜひ見て欲しいなぁ!」
たけさんの思いに突き動かされ、「よっしゃ!まかしといて!」と動き出しました。タイミングよく、会場も主催でイベントを企画してくださる方もとんとん拍子に決まり、翌年2月には高知でのイベントが実現しました。
テレビや新聞でも取り上げられて話題になりました。その時の様子は下記のページに掲載しています。
2004年2月28日イオン高知でのイベント
2004年3月1日~8日Cafe&Lunchげんきでの個展

そして、その年から高知福祉機器展にも参加して、たけさんコーナーを設けて絵やポストカードを展示してもらえることになりました。今年の高知福祉機器展にももちろん、たけさんはやって来てくれます!夜にはたけさんのもうひとつの楽しみである、かつおのたたきと美味しいお酒を堪能していただく予定です(^^)♪

ぜひ皆さん、たけさんに会いに来てくださいね!
たけさんのホームページはこちらです。「たけの世界
たけさんのブログはこちらです。「たけの間違いだらけの日本語

最後にたけさんと会話するときに使う筆談ボードと、パフォーマンス中のたけさんの画像をご紹介します。
takesan3takesan2

| コメント (2) | トラックバック (0)

2006/03/15

地域をつなぐことのひとつの視点

ちょっと気になるニュースを見つけましたので、取り上げてみます。
福祉住環境ネットワークこうちの活動の中でも、ひとりひとりのニーズにあった住環境の提案をしていくことで、その方の生活が改善され住み慣れた地域の中で生きがいを持って暮らしていく事が出来る。そしてそんな人を増やしていくことで、ひいては高知のまちを誰もが安心して自分らしく暮らせるまちにしていきたい・・・!というところを目標にしています。
そうした視点から、今年は小さい町の単位での情報発信や、人と人をつなぐ取り組みを1つのキーワードとして考えています。

そんな中、「近所のつながりが自殺を防ぐ」という記事を見つけました。
今の日本では、自殺者が7年連続で、年間3万人を超えているのが現状だそうです。(毎日新聞の記事より)

そして、自殺率ワースト1位が長年続いているのが秋田県。なぜ秋田県なのか・・・具体的な理由は分かりませんが、その中で、自殺防止に取り組んでこられた本橋豊・秋田大医学部教授(公衆衛生学)が実施した住民アンケートの結果から、近所の人との助け合いの気持ちや住んでいる土地への愛着が強いと回答した割合が高い地区の住民ほど、自殺と深く関係があるとされるうつ症状は少ない傾向にあることが分かったそうです。
失業や倒産といった社会経済的要因の影響が強いとされる自殺に、「近所付き合い」などにみられる地域ネットワークの強さも関係していることを示しており、本橋教授は「地域の信頼、人と人とのつながりが自殺の抑止力になっている可能性がある」と書かれています。

新しい発見のようで、昔から「向こう三軒両隣」の近所づきあいをしてきた経験をお持ちの方でしたら、”なにを今さら当たり前のことを”と思われるかもしれませんね。
昔は当たり前だったことを、今は行政や地域外に住む人が介入にしてサポートしながら復活させている状況ではありますが、なぜその必要があるのかを、環境整備の視点、緊急時、防災の視点・・・さまざまな視点から、まず市民ひとりひとりに知っていただく事が大切なのかなと感じました。

今年は楽しみながら、そうした気付きを持ってもらえるような仕掛けを微力ではありますが、いろんな方々と手をつなぎながら仕掛けていきたいと考えています(^^)

| コメント (0) | トラックバック (0)

2006/03/13

AEDの浸透度は?

aed2aed1
空港で、ふと眼にとまったAED(自動体外式除細動機)の装置。
http://www.nihonkohden.co.jp/aed/

ご存知の方も多いと思いますが、心臓に電気ショックを与える除細動機と呼ばれる救命のための機械です。
医学的な知識が少ない一般の方でも、機械が自動的に心電図を診断し、電気ショックを与える必要があるかどうかを判断するので、必要のない方に謝って電気ショックを与えてしまう危険性はないとのこと。
2004年7月から専門職だけでなく、一般の方の使用も認められるようになり、公民館や公共施設など、身近な場所にも設置して広く普及しようという声も高まってきています。

そんな中、先日間違ってデモ機を救急車に乗せていて緊急時に電流が流れず、亡くなった方がいるというニュースにショックを受けたことを思い出しました。
そんなにデモ機と見分けがつかないのでしょうか!?そこは分かりやすくしておいてほしいと願うばかりです。

私も一度、AEDも含めて救命講習を受けてみたいなと思っています。定期的に、消防署がやっているみたいですね。今度申し込んでみようと思います。

| コメント (0) | トラックバック (0)

« 2006年2月 | トップページ | 2006年4月 »