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2022/03/21

僕が一番欲しかったもの・・・

「ありがとうございます・・・」

 

張りつめた表情がふと緩んで、その人の笑顔を見ることが出来た。

 

その笑顔が見たくて、思わず手元にあったありったけの資料を渡していた。
自分に余裕もないくせに・・・私は間違ってるんだろうか・・・

 

 

 

Itaku2

 

高知市から委託を受けている、住宅改造アドバイザー事業の相談依頼が増えている。今までの経験からスムーズにアドバイスが出来て喜んでもらえるケースもあれば、関わっている医療・介護・建築などの専門職の皆さんと、あーでもないこーでもないと議論しながら、どうしても100%の解決にはつなげられなくて、悩むような複雑なケースも多々ある。

 

なるべく、ご本人やご家族の視点で実際にトイレや浴室など、不便を感じている場所で動作していただいたり、自分が代りに動いてみて、一番最適な方法を一緒に考えてみる。提案するプランの内容がイメージしにくい場合には、カタログや資料を見ていただいたり、絵に描いて説明して、なるべく分かりやすく伝えることも心がけている。

 

疾患や障害を見るのではなく、目の前のその人を見ること。その人がどうやったら、この家で笑顔で暮らせるようになるのか・・・まだまだ不十分なことも、不器用なところもあると思うけれど、私なりに出来ることの精一杯で、いつも関わらせていただいている。

 

 

 

Itaku1

 

今日の依頼も山間部のとあるお宅。重度障害を持つ20代の娘さんを、ご両親が献身的に介護しながら生活をされている。
通院をするのにも、全介助で抱えて車に乗せての移動。入浴も両親が役割分担しながら、一人が支えながら、一人が浴槽の中で抱えた状態で入られている。

 

マイナスな状況の提案はしにくいけれど、やはりいい状態の時だけではなく、本人の体調の悪い時、介護者が腰を痛めて介助出来なくなった時など・・・ 悪い状態の時も想定して考えておかないと、せっかくお金をかけて改修をしても使いづらい結果に終わってしまうこともある。
今回も慎重にそうした提案もしてみたけれど、ご両親の娘さんへの愛情と”今は出来ているから”という気持ちから、そうした状況の時は考えにくいようだった。せめて、抱えて移動するという前提から、シャワーキャリー(水まわり用車椅子)での移動も出来るような通路幅の確保と、段差の解消を・・・と提案して、それは理解していただけた。

 

それでもまだまだ、生活動線に段差の多い場所も多く、全ての問題をクリアするには費用面でも限界があり、様々な専門職の視点から一緒に解決を考えていく必要がありそう。私に何が出来るだろう・・・。

 

 

 

Yasamachi2また、お仕事として改修の依頼を受けた別のお宅でも、頭を悩ませるケースが・・・。こちらも山間部にある古い木造の家。

 

両膝を人工関節に手術、さらに腰椎、頚椎を痛めて現在入院中の80代の女性。ご本人は「家に帰りたい。」 という想いが強い。病院でお会いして、お体の状態を見せていただいてお話を伺ってから、ご自宅へ訪問。
台所は土間で、居室に上がるには60cmほどの段差がある。しかも五右衛門風呂とトイレは離れにある。その間をつなぐコンクリートの床はガタガタで不安定。

 

「今はなんとか歩行が出来ていますが、少しでも躓いたり、衝撃が加わると首の骨がずれて、手足のしびれ、最悪は不随になる可能性もあります。」との、医療専門職の見解。

 

「家に帰ったら、主人のためにご飯を作ってあげたい。トイレには自分で行きたい。」と、家に帰ってからの生活への希望を語るご本人の表情を見ながら・・・私にどこまでのことが出来るんだろう、何がご本人、ご家族にとって最適な方法なんだろうかと・・・考える。

 

 

 

その笑顔を見たいから・・・

 

  

 

最近ふと、思い出す歌がある。
♪「僕が一番欲しかったもの」by槇原敬之

この歌が流行った頃も、その歌詞に共感して救われていたっけ。こんな私の不器用でまっすぐな生き方を認めて、大切に想ってくれる人の存在が、また明日への一歩を踏み出す力になる。それは、私が一番欲しかった宝物かもしれない。今の幸せに感謝して、明日も誰かの笑顔のためにこの命を役立てよう。

 

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